ドローンでの空撮に欠かせない安定化装置「ジンバル」をご存じですか?ジンバルはカメラの揺れや傾きを感知してブレを補正し、滑らかな映像を実現する機器です。
本記事では、ドローンジンバルとは何かを基礎から詳しく解説し、その仕組みや種類、選び方、メンテナンス方法などをわかりやすく紹介します。
安定した空撮映像を追求する方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ドローン映像を安定させるジンバルとは
ジンバルは、ドローン搭載カメラの揺れを補正し、映像を安定化させるための装置です。ドローンが飛行中に受ける風やコントローラ操作による微小な振動を、内蔵されたセンサーが検知し、ブラシレスモーターを使ってカメラの向きを素早く調整します。
これにより、手持ち撮影と同様に滑らかな動画が撮影可能になります。高画質な空撮映像を得るために、ジンバルの搭載は現在では一般的です。
ジンバルの基本的な仕組み
ジンバルの動作には、ジャイロセンサーや加速度センサーが活用されます。これらのセンサーがドローンの揺れをリアルタイムで検知し、制御基板がその情報を演算処理します。
そして、ブラシレスモーターが瞬時に作動してカメラを揺れと逆方向に動かし、安定化を実現します。このようなセンサーとモーターの連携により、映像のブレを物理的に補正できます。
ドローン撮影における役割
ドローン撮影では、機体の動きや風の影響で微細な揺れが生じます。ジンバルはこれらの揺れを補正することで、空撮時に滑らかな映像を実現します。
例えば、風の強い環境や速い移動中でも、ジンバルが作用することで画面が大きく揺れることがありません。これにより、追尾撮影や高精細な映像制作でも高いクオリティが保たれます。
ドローンジンバルの仕組みと構造

ジンバルは、カメラを支える物理フレーム、内部の制御基板、各種センサー、モーターで構成されます。中心はジャイロなどのセンサーで、これが姿勢情報を検出し、制御基板が補正動作を計算・指令します。
ブラシレスモーターは高い回転精度とトルクを備えており、検出した揺れに対して瞬時に反応します。この連携により、カメラは常に水平を保つよう調整され、安定した映像が得られます。
ジャイロセンサーによる姿勢検出
ジャイロセンサーや加速度センサーは、ドローンの角速度や加速度を検知してカメラの傾きを把握します。
ジンバルの制御システムは、このセンサー情報をもとに補正角度を計算し、適切な指令をモーターに送ります。これらの制御によって、リアルタイムで姿勢補正が行われます。
ブラシレスモーターで揺れ補正
検知された揺れ情報を受け取ると、ジンバルに搭載されたブラシレスモーターが瞬時に作動し、カメラを逆方向に動かします。ブラシレスモーターは高速回転が可能で、微細な動きを正確に実行できます。
この結果、わずかな揺れも補正され、カメラは安定した姿勢を維持します。最新のジンバルでは、より高性能なモーターと精密な制御アルゴリズムにより、補正速度や精度が向上しています。
平衡バランス調整のポイント
ジンバルの効果を最大化するには、カメラを正しくバランスさせることが重要です。バランスが取れていないと、モーターに余計な負荷がかかり、補正が追いつかなくなります。
通常、カメラやレンズをジンバルに取り付けた後、スマートフォンアプリや専用ソフトで水平・垂直のキャリブレーション(バランス調整)を行います。これにより、ジンバルは軽い力で瞬時にカメラの姿勢を制御できるようになります。
ジンバルの種類と特徴

ジンバルには主に軸数や設計によっていくつかの種類があります。2軸ジンバルは上下(チルト)と左右(ロール)の動きに対応し、3軸ジンバルはさらに水平方向の回転(パン)も補正します。
軸数が多いほど揺れを抑える範囲が広がり、滑らかな映像になりますが、その分構造が複雑になり、重さやコストが増します。用途や撮影スタイルに応じて、2軸や3軸などのジンバルを選ぶ必要があります。
2軸ジンバルの特徴
2軸ジンバルは、チルト(上下方向)とロール(左右傾き)を補正します。比較的軽量で安価なモデルが多いため、小型ドローンや軽量カメラでの使用に適しています。
水平線を維持しながら上下の揺れを抑えることができ、基本的な手ブレ補正には十分な性能を発揮します。ただし、ドローンの横方向の回転(パン)には対応していないため、急激な方向転換では映像が回転して見えることがあります。
3軸ジンバルの特徴
3軸ジンバルは、チルト・ロールに加え、パン軸(左右回転)も補正します。これにより、ドローンが旋回するような複雑な動きでも映像が水平に保たれ、高度な手ブレ補正が可能です。
3軸ジンバルは2軸モデルに比べて構造が複雑になり、重量やコストが高くなりますが、その分だけ滑らかな映像が得られます。プロの映像制作や精細な空撮では3軸ジンバルが主流です。
ユースケースに合わせた選択
ドローンジンバルは、用途に合わせて選びます。例えば、小型ドローンや重量制限のある機体では軽量な2軸ジンバルが適しています。
一方で、映画やプロモーション撮影など高品質な映像が求められる場合は3軸ジンバルが一般的です。また、最近では360度撮影対応のジンバルや、一部角度を可変できる製品も登場しています。撮影スタイルや機材の特性に応じて最適なモデルを選びましょう。
| 比較項目 | 2軸ジンバル | 3軸ジンバル | 
|---|---|---|
| 補正する軸 | チルト・ロール | チルト・ロール・パン | 
| 映像安定度 | 横方向は未対応 | 全方向を高精度に補正 | 
| 重量・コスト | 軽量・安価 | 重く高価 | 
| おすすめ用途 | 予算重視や軽量ドローン向け | プロ撮影や高品質重視 | 
ドローンジンバルの役割とメリット
ジンバルが備わっていることで、ドローン映像の品質は大きく向上します。手振れや風による揺れを物理的に補正して滑らかな映像を実現し、被写体を追尾しても安定した撮影が可能です。
これにより、映画やイベント撮影のようなプロフェッショナルな映像表現が可能になります。例えば、ドローンが旋回したり上下移動しても水平感を失わず美しい空撮映像を撮影できます。
安定した映像を実現
ジンバルはカメラの不要な揺れを補正するため、動きながらの撮影でも安定した映像が得られます。これにより、撮影者やドローンの動きに左右されずバランスの取れた映像を記録できます。
例えば、風の強い環境や速い移動中でも、ジンバルが作用することで画面が大きく揺れることがありません。結果として、視聴者にストレスのない滑らかな映像を提供できます。
撮影表現の幅を拡大
ジンバルがあることで、空撮の表現方法は大きく広がります。ドローンを上下左右に動かしたり旋回したりしながらでも、安定した映像を撮影できます。
これにより、パノラマワイドショットや被写体追尾、スムーズな移動撮影など、多彩な映像表現が可能になります。ジンバルは単なる手ブレ補正装置ではなく、クリエイティブな映像制作の幅を拡げる重要な道具です。
ジンバルには多くのメリットがありますが、いくつかの注意点もあります。一般的なデメリットは、ジンバル自体の重量とコストの増加です。
- ジンバルを搭載すると機体が重くなるため、飛行時間が短くなる場合があります。
- 高性能なジンバルは価格が高く、ドローン全体のコストが上がります。
- 構造が複雑な分、故障や調整の手間が増える場合があります。
これらの点を踏まえ、予算や用途に合わせてメリットとデメリットを比較することが重要です。
ジンバルと電子手振れ補正(EIS)の違い

映像の手ブレ補正には、ジンバルを使った機械的補正と電子式の手振れ補正(EIS)の2種類があります。ジンバルは物理的にスタビライザーを動かして補正するのに対し、EISはソフトウェア的に画像処理で補正します。
両者は役割や効果が異なるため、利用シーンや目的に応じて使い分ける必要があります。
機械式ジンバルと電子補正の違い
機械式ジンバルは物理的にカメラを動かしてブレを補正するのに対し、電子式の手振れ補正(EIS)はソフトウェアで画角をトリミングして補正します。
機械式は映像の端まで補正可能な一方で、EISは映像の一部を切り取るため画角が狭くなります。それぞれ補正方法が異なるため、効果や制約も異なります。
両者のメリット・デメリット
機械式ジンバルのメリットは、高精度で滑らかな映像が得られる点です。追加機材が必要ですが、画質劣化がほとんどなくブレを補正できます。一方、重量やコストが増加するのがデメリットです。
EISのメリットは、専用機材が不要で軽量なことです。ただし、映像をクロップするため視野角が狭くなり、特に激しい動きでは補正効果が制限されるのがデメリットです。
使い分けのポイント
動きの少ない静止画や低速度の映像撮影ではEISである程度ブレを抑えられます。しかし、ドローンが急激に動く空撮やプロの映像制作では機械式ジンバルが必要です。
実用面では、ジンバルを搭載したドローンで撮影しつつ、映像編集時にEIS処理を加える使い方もあります。目的に合わせて最適な補正方法を選びましょう。
ジンバルの選び方とポイント
ドローン用ジンバルを選ぶ際には、カメラやドローンとの互換性や目的に合わせた軸数を検討しましょう。合わせて、重量や搭載可能なカメラの最大重量も重要なポイントです。
さらに予算や性能、耐久性、操作性なども考慮します。ここでは、ジンバル選びの際にチェックしたい主なポイントを紹介します。
軸数と搭載重量の考え方
ジンバルを選ぶ基本は、軸数と対応するカメラの重量です。3軸ジンバルは補正性能が高い反面、重量が増えがちです。取り付けるカメラが重い場合は、ジンバルの耐荷重とドローンのペイロード(搭載可能重量)を確認しましょう。
軽量カメラであれば2軸ジンバルで十分な場合もあります。まずは使用するカメラの重量と撮影スタイルから必要なジンバルの軸数を検討します。
互換性と汎用性
ジンバルの固定方法やケーブル接続を確認し、ドローンやカメラと互換性があるか見ましょう。メーカーによって取付設計が異なる場合があり、専用設計のジンバルもあります。
また、予備部品の調達やサポート体制、使い回しのしやすさも重要です。複数のカメラを使いたい場合は、汎用性の高いマウントがあるモデルを選択するとよいでしょう。
予算と性能選び
ジンバルは性能によって価格帯が大きく異なります。安価なモデルは機能が絞られ、耐久性が劣る場合があります。高級モデルは高度な制御や防塵性能などが追加されていることも多いですが、高額です。
使用頻度や求める映像クオリティに応じて予算を決めます。また、将来的にカメラを交換する可能性がある場合は、拡張性も考慮しましょう。コストと求める性能のバランスを見極めることが大切です。
ドローンジンバルの使い方とメンテナンス
ジンバルは精密機器なので、正しく使用しメンテナンスを行うことが重要です。ここでは、初期設定から日常のケアまで、ジンバルを長持ちさせるためのポイントを紹介します。
初期設定とキャリブレーション
使用前には必ずジンバルのバランス調整とキャリブレーションを行います。カメラとジンバルを取り付けた状態で、水平を保つように微調整しましょう。多くなジンバルは専用アプリやランチャーを使い、ジャイロキャリブレーション(水平調整)を実行できます。
この作業を怠ると、フライト中にジンバルが大きく傾いたり、モーターに余分な負荷がかかって故障につながる可能性があります。
日常のメンテナンス
ジンバルは埃や湿気に弱いため、使用後は清掃と保管に注意します。カメラやモーター周りの埃を柔らかい布で拭き取り、結露や雨などで濡れた場合はしっかり乾燥させましょう。
また、定期的にネジの緩みをチェックし、必要に応じて締め直します。バッテリーを適切に管理し、過充電や過放電を避けることもジンバルの寿命を延ばすポイントです。
ジンバル使用中に問題が発生した場合は、以下を確認・対処します。
- 映像にビビり音や大きな振動がある:バランス不良や取付けのネジ緩みが考えられます。
- ジンバルのキャリブレーションに失敗する:専用アプリで再設定を行います。センサーエラーや接続不良もチェックしましょう。
- モーターが動かない:バッテリー残量や接触不良を確認します。重大な不具合はメーカー修理を検討してください。
日頃から定期点検し、不調は早めに対応することで機器を長持ちさせることができます。
ドローンジンバルの最新トレンド
近年、ジンバルはより進化した技術と機能を取り入れています。軽量化により機体への負荷を抑えつつ、高度な機能を実現する製品が増えています。
ここでは、最近注目されている技術や機能について紹介します。
最新モデルに見る技術革新
最新のジンバルでは、軽量な素材や小型モーターの採用で従来よりもコンパクトかつ高性能になっています。また、ドローン本体と密結合した一体型ジンバルが増え、市販のカメラを取り付けるのではなく、専用カメラを搭載するドローンも登場しています。
これらのモデルは、ジンバル動作の高速化や振動制御の高度化によって、より安定した映像を実現しています。
自動追尾とスマート機能の追加
最新のジンバル搭載ドローンには、自動追尾(トラッキング)機能が組み込まれる例が増えています。AI技術を活用し、被写体の動きを自動検出してジンバルを連動させることで、カメラマンの手を離しても被写体を画面中央に捉え続けます。
また、スマートフォンやリモコンからジンバルの動きを細かく制御できる機種も普及しており、複雑な演出やパノラマ撮影も簡単に実現できるようになっています。
省電力化と軽量設計
ジンバル技術の進化として、バッテリー効率の改善と軽量化が進んでいます。ブラシレスモーターの制御アルゴリズムが高度化し、消費電力を抑える設計が増えています。
また、カーボンファイバーなどの軽量素材を使用することで、ジンバル自体の重量も軽減されています。これらにより、ドローンの飛行時間を大幅に延長しつつ、安定性を維持することが可能です。
まとめ
ドローン用ジンバルは、空撮映像の品質を大きく向上させる重要な装置です。センサーとモーターの連携でカメラの揺れを抑え、安定した映像を実現します。ジンバルには2軸・3軸などの種類があり、用途に応じて選ぶ必要があります。
ジンバルと電子手振れ補正(EIS)にはそれぞれメリット・デメリットがあり、賢く使い分けることで最適な効果を得られます。選び方では、軸数や耐荷重、互換性、予算などを考慮しましょう。そして、初期設定や定期的なメンテナンスをしっかり行うことで、機材を長く使うことができます。
ドローンジンバルの最新技術を活用して、安定した美しい映像を追求してください。