近年、ドローン空撮では被写体を追尾しながら撮影する「追跡機能」搭載機種が注目を集めています。
追跡ドローンとは、GPSや画像認識技術で対象を捉え、自動で追尾しつつ撮影できるドローンのことです。
スポーツ撮影や映画製作はもちろん、捜索・救助や監視業務など多彩な分野で活躍しています。
技術の進歩に伴い追跡精度は向上していますが、運用時には許可や安全面での注意も必要です。今回は2025年の最新情報を交え、追跡ドローンの仕組みと活用例、選び方と注意点を詳しく解説します。
追跡ドローンとは何か?基本的な仕組みと技術
追跡ドローンとは、動く被写体を自動で追いかけながら撮影できる機能を備えたドローンのことです。
通常のドローンは一定のルートを自動飛行させるのみですが、追跡ドローンはGPSやセンサーで対象をロックオンし、常に一定距離を保って追尾します。
例えば多くの民生用ドローンには「フォローミーモード」や「アクティブトラック」と呼ばれる機能があり、スマートフォンや送信機の位置情報を利用したり、カメラ画像から被写体を認識して追跡します。
フォローモードは操作端末のGPSに連動してドローンが追いかける方式で、比較的簡易な追跡が可能です。アクティブトラック機能はドローン自身のカメラとAIで対象を認識して追尾します。
フォローモードとアクティブトラックの違い
フォローモードは、ドローンとコントローラー(スマートフォンなど)を連携させて追跡します。
コントローラーにGPS機能があると、ドローンはその位置に追随して飛行するので簡単ですが、被写体を近距離で捉えるのは難しい場合があります。
一方、アクティブトラック(アクティブ追跡)はドローン側に高性能なカメラやセンサーを搭載し、映像の中の被写体を自動認識して追尾します。
対象がフレームアウトしたり複数の対象が近づいた場合に誤認する課題もありますが、最新機種ではAIの進化により精度が大きく向上しています。
GPSトラッキングによる追跡方法
GPSトラッキングは、ドローンと被写体側の送信機やスマートフォン双方にGPSレシーバーを搭載し、位置情報をやりとりして追尾する方式です。
Kudroneなどの自動追尾ドローンでは、送信機に搭載したGPS情報をドローンに送り、ドローンも自らの位置をGPSで計測して制御します。
GPS方式は安価で扱いやすく、電波状況さえ良ければ広範囲で追跡可能ですが、建物や木々で電波が遮られると精度が落ちるのが難点です。
画像認識・センサーを使った追跡技術
画像認識を用いた追跡技術では、ドローンに搭載されたカメラとコンピュータビジョンで被写体を把握し、動きを追跡します。
この方式なら目標を映像内で直接追えるため、たとえ電波の届かない場所でも追尾できます。
通常はドローンにジャイロ・加速度センサーや磁気コンパスなども備わり、自律飛行の安定化に寄与しますが、高速で被写体が動いたり障害物で見失うと追跡が切れる場合もあります。
追跡ドローンの活用事例・用途
追跡ドローンは、多様な分野で利活用されています。
用途として特に注目されるのがスポーツ撮影やアウトドア撮影、映画制作などの映像分野です。
スポーツ・アウトドア撮影での活用
追跡ドローンはサイクリングやランニング、スキーなどスポーツ・アウトドア撮影に最適です。
被写体の動きを自動で追って撮影するため、手作業では難しいダイナミックな映像が手軽に撮れます。
自転車レースやサーフィンなどスピードのあるシーンでも、最新の自動追尾機能を駆使すれば滑らかな追跡映像を記録できます。
災害捜索・救助での活用
山岳や海上の捜索活動でも追跡ドローンは有用です。
GPS追跡機能を使って探索範囲を自律的に飛行させれば、広範囲を短時間で捜索できますし、被災者の位置情報を共有すれば迅速に移動できます。
また夜間に暗視機能付き追跡ドローンを投入すれば、救助隊が人影を発見しやすくなるため、捜索救助への貢献が期待されています。
警備・監視業務での活用
警備や監視目的での活用も増えています。広大な敷地や工場の巡回では、追跡ドローンが自律的にパトロール飛行を行うことで省力化が可能です。
動体検知機能と組み合わせれば、不審者や侵入者を自動追尾して映像記録することもできます。
ただし、監視に用いる場合は法令遵守やプライバシー保護に厳重な配慮が必要です。
農業・インフラ点検での活用
農業分野やインフラ点検でも追跡ドローンの利用が広がりつつあります。
農地を自律的に飛行しながら撮影して作物の生育状況をモニタリングしたり、インフラ施設の維持・点検でドローンの位置情報を記録するケースなどです。
例えばGPSと高性能カメラを搭載したドローンで作物の健康状態を解析すれば、農薬散布の効率化につながりますし、橋梁や鉄塔の点検では高所での危険作業を軽減できます。
最新の追跡ドローン技術と進化
追跡ドローンの技術は日進月歩で進化しています。
従来のGPSやセンサー方式に加え、AIによる画像認識精度の向上、高速追跡アルゴリズム、暗視対応センサーなど先端技術が続々と導入されています。
AI・画像認識技術の進化
近年はAI(人工知能)技術の発展により、ドローン搭載の画像認識能力が飛躍的に向上しています。
深層学習を活用することで人や車など特定の対象を高精度で認識し、複雑な背景でも追跡を継続できるようになりました。
これにより、自動追尾機能で誤認を減らし、より滑らかな映像追尾が可能になっています。
夜間・悪天候での追跡機能
暗闇や雨天など従来苦手だった環境にも対応する機能も登場しています。
Skydio X10の「NightSense(ナイトセンス)」技術や赤外線カメラ搭載機種が、夜間でも自律飛行や対象検知を可能にしています。
このようなナイトビジョン機能があれば、活発な動物や救助対象者を夜間でも捜索できるようになり、追跡ドローンの活用範囲が広がります。
複数ドローン協調追跡システム
複数の追跡ドローンを連携させて対象を捉える協調追跡システムも研究されています。
ドローン同士が情報共有しながら飛行することで、より広範囲を効率的に監視・追跡できます。
複数の角度から対象を追いかけることで、1機では見失う瞬間でも追跡を続行できる可能性が高まります。
追跡ドローン使用時の注意点と課題
追跡ドローンを使用する際は、技術面だけでなく法規制や安全面の配慮も不可欠です。
法規制と許可の必要性
日本ではドローン飛行に航空法や道路交通法による規制があります。
例えば、道路上で移動する車両を追尾する撮影は道路使用許可が必要な場合がありますし、バイクや自転車を実際に走行させながらの空撮は原則禁止です。
使用地域や高度制限など、機体の重量と使用方法によって許可が必要かを事前に確認することが重要です。
安全対策と墜落リスク
追跡ドローンは追尾対象に集中するため、周囲の障害物や風の影響にも注意が必要です。
急な風や電波環境の変化で姿勢が崩れたり、木や建物に接触したりするリスクがあります。
追尾飛行中も常に周囲の状況を監視し、衝突回避や高度維持などに気を配る必要があります。
プライバシー問題とモラル
追跡ドローンは高性能な映像機器でもあるため、撮影対象のプライバシーに配慮しなければなりません。
道路を追尾飛行すると周囲の人々や住宅が映り込む恐れがあり、個人情報保護の観点から注意が必要です。
合法的に使用するにしても、撮影前に関係者の了承を得るなどモラル面での対策が欠かせません。
運用上のその他の注意点
バッテリー稼働時間や通信範囲にも限界があります。
特に追跡飛行は移動距離が増えるためバッテリー消費が激しく、長時間の運用では複数のバッテリーが必要です。
また、山間部や市街地ではGPS信号が不安定になることがあるため、あらかじめ飛行経路を把握し安全マージンを確保しておくことも重要です。
追跡ドローンの選び方とおすすめ機種
追跡ドローンを選ぶ際は、自分の用途や予算に合わせて機能・性能を比較検討しましょう。
機能・性能別の選び方
まずは、何を撮影したいか、どの程度の自動追尾精度が必要かを明確にします。
スポーツ撮影や業務用途では、高精細なカメラと安定した追尾機能が求められるため、4K撮影や複数GPSを搭載した機種が向いています。
軽量機種や初心者向けには入り口価格の低いドローンがありますが、風や障害物に弱い点には留意しましょう。
コスト・機体サイズの比較
ドローンは小型ほど規制が緩やかになりますが、機能もシンプルになります。
価格面では、国産や大手メーカー製はサポートが充実している反面、高価になりがちです。
海外製やノーブランド機は安価でも追尾機能を持つものがありますが、品質や保証には注意が必要です。
用途とコストのバランスを見て選びましょう。
おすすめの追跡ドローン機種
- DJI Mavic 3:4Kカメラと高度なアクティブトラック機能を搭載。安定した飛行性能でプロ向け。
- DJI Air 2S:1インチCMOSセンサー搭載で高画質撮影が可能。手軽なフォローモードとActiveTrack対応。
- DJI Mini 4 Pro:250g未満で申請不要の軽量機体。自動追尾機能も備え、初心者にも扱いやすい。
- Autel Evo Lite+:大型センサー搭載で低照度にも強い。追尾性能は平均的だが、比較的価格が抑えられている。
主要モデル比較表
機種 | 特徴 | 参考価格 |
---|---|---|
DJI Air 3 | 4K/60fpsカメラ、アクティブトラック機能搭載 | 約¥120,000 |
DJI Mini 4 Pro | 249gの軽量機体、フォローミー機能搭載、4K動画撮影 | 約¥100,000 |
DJI Mavic 3 | デュアルカメラ搭載、高度なActiveTrack、長時間飛行 | 約¥450,000 |
DJI Air 2S | 1インチセンサー搭載、高画質4K/60fps撮影 | 約¥80,000 |
まとめ
追跡ドローンは、最新技術を活用して動く被写体を自動で追いかける高性能ドローンです。
スポーツ撮影や救助活動、監視・調査など幅広い分野で活用され、性能は年々向上しています。
ただし、撮影許可や安全対策、プライバシーの配慮など運用上の注意点も重要です。
用途に合った機種を選び、法規制を守りながら、安全かつ効果的に活用しましょう。