最近、ドローンを高高度で飛ばす方法に注目が集まっています。従来は150mまでの飛行が限度でしたが、特別な許可を得ると500mの上空での空撮も可能となります。
この記事では、ドローン500m飛行の実現可否や必要な許可、装備、安全対策について専門的に解説します。
ドローン500m飛行の基礎知識
最新の市販ドローンは飛行距離や高度性能が飛躍的に向上しており、小型機でも数kmの飛行が可能です。例えばDJI製ドローンでは送信機との通信距離が10km前後に達する機種もあります。しかし、航空法ではドローンの飛行を150m以下に制限しています。このため通常は150m以上の飛行はできません。
それでも物理的には500mまで上昇できる機体も存在します。高度が上がるほど空気抵抗は低下するため機体は上昇しやすくなり、バッテリーを大容量にすれば数百mの飛行時間も確保できます。ただし、高度が増すと風の影響を受けやすくなり、さらに上空から戻るまでの飛行時間も長くなるため、十分なバッテリーと通信の余裕が必要です。
ドローンの飛行範囲と機体性能
例えば最近のドローンでは通信距離が数km~10km単位になる機種があります。通信方式には専用の2.4GHz/5.8GHz帯やOcuSync等があり、送信機のアンテナ性能が高いほど遠距離操縦が可能です。機体性能の面では、高性能なブラシレスモーターと大型バッテリーを備え、20分~30分程度の連続飛行時間を維持できるモデルが一般的です。
これらの数値は理想的な条件下でのスペックであり、実際は風や電波干渉で性能が低下し、メーカー公称値よりも短い飛行距離になる点に注意が必要です。
航空法における150m制限
日本の航空法では、小型無人機(ドローン)の飛行に厳しい規制が設けられています。特に高度150m以上の飛行は禁止されており、これを超えて飛行させる場合は国土交通大臣の許可・承認が必要です。また夜間や人・建物の上空飛行、人口集中地区での飛行も制限対象です。これらは航空機との安全距離を確保するためで、安全航行のため必ず遵守しなければなりません。
500m飛行の現実性と条件
以上のように通常は150mが上限ですが、条件を満たせば500m飛行も不可能ではありません。実際に500mを飛行しようとする場合、複数の対策が必要になります。具体的には、長距離飛行に耐えうる大型バッテリー・強力な送信機、加えて遠方まで安定した電波通信を実現する中継機器の導入が挙げられます。これらの装備を整えたうえで法的な申請を行うことで、500mまでの高度飛行が機体的には可能になります。
ドローン500m飛行に必要な法律と許可

航空法では、ドローンを含む無人航空機の飛行には複数の規制があります。高度150m以上や空港周辺での飛行などには必ず飛行許可・承認が必要であり、国土交通省のオンラインシステム「DIPS」で申請を行います。申請時には飛行予定の日時・場所・ルート・高度・操縦者情報などを詳細に届け出ます。空港周辺ではさらに関係機関との事前調整が必要です。
許可のない飛行は法律違反となり、罰則(懲役・罰金)の対象になります。しかし許可を得れば、150m制限の解除だけでなく夜間飛行なども可能になります。申請の審査には通常10~14営業日を要するため、飛行計画は余裕をもって準備しましょう。なお、複数地点で飛行する場合は一度の申請で5か所までまとめて申請でき、効率的です。
空港周辺の「水平表面」区域での高高度飛行は特に審査が厳しく、追加の手続きが必要です。たとえば福島県内で高度500mの空撮を許可・取得する際には、東京航空局や福島空港の管制所に事前に飛行計画を提出しました。飛行中は離陸前後に管制官へ連絡し、飛行機が近づいた場合には即座に着陸するなどの条件を課されました。このように、空港付近での飛行では事前の調整と確実な連絡体制が不可欠です。
飛行申請の基本とDIPS
DIPS(ドローン情報基盤システム)は無人航空機の飛行許可・承認申請を行う専用オンラインシステムです。利用には操縦者登録と機体登録が必要で、登録後はWeb上で申請書を作成します。飛行日時・場所・高度や機体重量、操縦者の資格情報などを入力し、飛行ルートを示す地図を添付して申請します。書類はWeb上でPDF化され、紙の提出は基本的に不要です。ただし、機体に型式証明(型式認証・機体認証)が必要な場合は、その証明書類を用意します。
許可取得のポイント
許可申請では具体的で安全な飛行計画を示すことが重要です。飛行ルート図や撮影高度を明示し、バッテリー容量や予備機の用意、障害物回避策などの安全対策を説明します。許可が下りた場合は管制官から飛行高度や時間帯の制限、目視従事者(補助者)の配置といった条件が付されることが一般的です。審査が済むとDIPS上で許可証PDFを入手できるので、当日現場で携行しておきましょう。
空港周辺など特別区域の手続き
空港周辺での飛行は「進入表面」「移転表面」「水平表面」などの制限表面が設定されています。これらの区域で飛行する際は、通常の許可申請に加え管制官との事前調整が必要です。特に水平表面で500m飛行する場合は、空港事務所に計画を提出し、離陸・着陸前後に管制官へ連絡するなど厳しい条件となります。これらの区域では飛行時間帯や高度範囲などが特別に指定されることが多く、明確な計画と許可取得が求められます。
500m飛行可能なドローンと装備

500m飛行を目指すには機体性能だけでなく周辺機材の強化も必要です。まず大容量バッテリーと長距離通信を支える送信機・アンテナが重要です。さらに、送信機中継器(リピーター)を使って電波到達範囲を延長したり、補助バッテリーで送信機の電力を確保したりといった対策も考えられます。
高性能機体の特徴
- 軽量かつ頑丈なフレーム:高高度飛行では落下リスクが高まるため、耐衝撃性の高いフレームが望ましい。
- 高出力モーター:空気密度が低下すると推力が減少するため、十分な出力余力があるモーターが必要です。
- 大型プロペラ:揚力効率を高めるため、大きめプロペラで効率的に推力を稼ぎます。
- 高精度のGPS・センサー:高度保持や位置制御の精度を高めるため、精度の高い測位・姿勢センサーを搭載します。
通信機器と中継装置
送信機から機体への通信距離が長くなるほど、アンテナの指向性や出力が重要になります。一般的には2.4GHz帯や5.8GHz帯を使用しますが、長距離飛行には送信機中継器(リピーター)を利用すると効果的です。リピーターを用いれば、山間部や建物陰など遮蔽物の多い環境でも通信が途切れにくくなります。また送信機・機体ともに最新スペックのものを選びましょう。例えばDJIの新世代プロトコル(O3/O4)では数十kmの伝送性能が公称されています。
バッテリー持続時間の確保
500m飛行には長時間の飛行が伴うため、予備バッテリーを用意するのは必須です。飛行計画時には、片道・復路を含め十分な残量を確保できるようバッテリーを選びます。複数バッテリーを使い分ける場合は同一機種・同一ロットのものを選び、充放電を均等化します。また、低温環境ではバッテリー性能が落ちるため、出発直前にバッテリーを温めておく配慮も必要です。緊急時にはフェールセーフ機能(自動ホバリングや自動帰還)が正しく動作するか事前に確認し、万一の際に安全に着陸できるよう対策しておきましょう。
500m上空からの撮影と活用方法
500mの高度からは地表だけでなく遠方まで見渡せるため、圧倒的な広視野の撮影が可能です。例えば山間部や広大な農地を500m上空から撮影すれば、一度で数km先までの景色を一望できます。広域をカバーできるため、マッピングや監視、パノラマ撮影に適しています。また大規模イベントや都市の俯瞰映像などでも高所からの視点がインパクトを与えます。
高高度空撮のメリット
- 【広範囲撮影】500m上空からは数km先まで見渡せるため、一度のフライトで広大なエリアを収められます。
- 【安全な俯瞰撮影】離着陸や人・建物との接触リスクを大幅に減らしつつ全景を撮影でき、安全性が高まります。
- 【新たな映像表現】通常とは異なる視点で迫力ある映像を得られるため、ドキュメンタリーやPVなど映像制作で注目されます。
広域監視・測量への応用
- 【災害対応】山崩れや洪水などの発生時に被害範囲を俯瞰でき、迅速な状況把握に役立ちます。
- 【インフラ点検】送電線や風力発電設備など高所設置のインフラを遠隔から観察し、補修計画の資料が得られます。
- 【農林業利用】広大な農地や森林の空撮により、作物生育状況や森林被覆率の調査・解析を効率化できます。
500m飛行における安全対策

500mでの飛行では通常より多くのリスクが伴います。冷たい高高度の外気温や強風、通信途絶などに対処する必要があります。また、目視外飛行に該当する場合は法規上補助者の配置が必要になることもあるため、飛行管理に熟練した体制を組むことが重要です。
天候・風速への備え
- 飛行前に気象情報を確認し、風速・風向や降雨・降雪の可能性を把握します。500m上空では地上よりも風が強いことが多いため、常に風速に注意しましょう。
- 高度が上がるほど気温は低下するため、バッテリーの消耗が早くなります。予備バッテリーは温かい環境で管理し、飛行直前まで機体を冷やし過ぎないように工夫します。
通信・電波干渉の対策
- 送信機のチャネル設定を確認し、周囲の電波状況に応じて混信を避けます。遠距離飛行では建物や地形で電波が遮られやすいため、できるだけ見通しの良い経路を飛行ルートに選びます。
- 通信が途絶えた場合に備えて、機体のフェールセーフ機能(自動ホバリング・自動帰還)が正常に作動するか確認します。FPVのWi-Fi飛行は伝送距離が短いため、長距離飛行には専用送信機(プロポ)を使うのがおすすめです。
バッテリー残量と緊急時対応
- 飛行計画では必ず往復に十分なバッテリーを見積もり、予備も用意します。高度が上がるほど消費電力は増すので、安全マージンを大きくとることが重要です。
- 万一通信が途絶したり故障が発生した場合、直ちに事前設定したフェールセーフ動作に切り替えられるよう準備します。着陸可能な安全エリアを決め、緊急時はそこへフェイルセーフ誘導する計画を立てておきましょう。
まとめ
ドローンで500mの高高度飛行を行うには、高性能の機体・機材に加え、航空法に基づく許可申請と十分な安全対策が欠かせません。航空法では原則150m以上の飛行は禁止されていますが、適切な手続きを経て許可を得れば500m飛行も可能になります。安全飛行のポイントは、長距離飛行に耐えるバッテリーや通信機器の準備、気象条件の確認、航空管制との密な連携です。これらを踏まえ、最新情報に注意しつつ計画的に飛行を行いましょう。